蒸気エンジンパラダイス  エンジン模型礼賛
Vol.2 ラインマー 蒸気エンジン模型 (1950年代 Japan)
text &photo 川瀬 桂司

Made in Japan の逆襲

年配のアメリカ人から聞いた話だが、かってMade in Japanと言う言葉は粗悪品の代名詞のような使われ方をされていた時期があったらしい。 買ってすぐ壊れて捨てる時、安物買いの銭失いを悔やみながらこの言葉を発していたそうだ。 二昔前にわれわれが東南アジア製のモノに対して持っていた印象を思い出すと、この言葉のニュアンスが理解しやすい。 
戦後復興の外貨獲得のためアメリカに安価な物をどんどん輸出した結果、前述のような不名誉な事を言わた時代が1960年なかばごろまで続いた。 やがて時が経ち、当時作られたモノ達に新たな魅力を感じ、価値を見出す動きが興ってきた。 その中の代表的なモノがMade in Japanのブリキのオモチャ、逆に今ではそれに夢中になっているアメリカ人も多い。 

    ラインマーのToy スチームエンジン
ブリキのオモチャの延長上にあるローエンドモデルの代表とも言える。 バーティカルボイラーとホリゾンタルボイラーの蒸気エンジンとアクセサリー(3種)
エンジン形式はいずれもオシレーティング(首振りエンジン)

ホリゾンタルボイラーのオシレーティングエンジン

第一印象は何かに似ている・・・ そう、同時代のフライシュマンにシルエット、ディテールともコピーと思えるほど類似点が多い。 しかし、持ち上げて見ると“おゃ?”と思うほど軽い。
この類のモノは重量とクオリティーは比例する法則がある。
素材の肉厚が直接重量に反映するからだ。 触って見ると材料の薄さが指先でも感じ取れる。 欧米のモデルではめったに感じられない感触、ブリキのオモチャと言う印象だ。
ボイラーはプレスした薄い鉄板を上下で重ね合わせた独特の構造、安全弁はあるものの、一見汽笛に見える前側に立っている物はただの棒、ダミーである。 

オシレーティング(首振りエンジン)部分

クランクのピンとピストンロッド先端部の組み合わせが浅すぎる様だ。 下死点では外れそう、パーツの位置決めの孔も開いてそこに各パーツが取り付けてあるし、パーツのゆがみも無い。 設計が悪いのか、加工が悪いのか、許容範囲なのか分からない。
クランク軸の受けは多少厚めの鉄板でできているが給油孔も無い、ピストンロッドの先端部もプラスティック製で耐久性については考慮されていない。
一通り点検を済ませ、安全弁を外しそこからエアーを吹き込み動かしてみることにした。 調子よく回り始めたと思った瞬間、案の定、ピストンが外れ吹っ飛んでしまった。 やはり組み合わせが浅すぎる様だ。 簡単な加工で調整できそうなので暇を見てキチンと動くようにしたいと思う。
バーティカルの方は配管がリークしており直したら動くようになった。

フェイク

アクセサリーのバッファーの白いディスク(写真左上)はプラスティック製、 欧米のメーカーはこういった所にもフェルト、砥石など本物の素材を使うのだが・・・

勝手なストーりー
二つのエンジンとも動かした形跡がほとんど無い。なぜ?  色々な想像が頭を過ぎった。

「1950年代の半ばアメリカのとあるパパが息子のクリスマスプレゼントを探していた。 自分の興味と息子へのプレゼントを兼ねToyスチームエンジンを買うことに決めた。 ホビーショップでちょっと高いドイツ製とそれに良く似た日本製を見つけ、さんざん迷った末、予算の関係で日本製を買って家に戻った。 クリスマスの朝、枕元に置かれたプレゼントを見つけた息子は大喜びで早く遊ぼうとパパにせがんだ。
内心早く動かしたくてしょうがなかったパパであったが一通り蒸気エンジンに関する薀蓄を息子に語った後、動かす準備を始めた。 水を入れ、油を注し、燃料に火をつけ暫く待った。 蒸気が出始め準備完了、いよいよ動く・・・ はずみ車が回ったと思った瞬間・・・ピストンが吹き飛んだ。 一瞬何が起こったのかわからない。 アッチッチ、アッチッチ 怪我をしなかったのがせめてもの幸い、パパの威厳はピストンと共に吹き飛んでしまった。 パパは“Made in Japan” と叫び、箱にしまってしまい、そのまま何十年も屋根裏部屋で埃を被っていた。」
                                  たぶんこれに近い物語があったに違いない。

アラばかり書いてしまったが、想像をかきたてたり、想いをめぐらしたり、自分とほぼ同じ年のこのモデルに特別な愛着湧くのは確かだ。

アメリカMARX社の子会社?日本法人?だった日本のLINEMAR社、資本、経営上の関係は良く分からない。
LINEMAR社は日本でアメリカ輸出用のオモチャを作っていた。 同社のオモチャが日本国内で販売されていたかは不明、情報を求む。



                   \.Ask

エンジン模型あれこれ
Vol.1メルクリン(Germany)
 限定復刻品に戻る

エンジン模型あれこれ
Vol.3 ウィーデン(USA)
 100年前の$3.00の価値へ進む

状態は悪いが箱も残っている。 イラストも面白い。

〜趣味人・道楽者・通人のための〜  
K's Collection
大の大人を夢中にさせる!?  世界のスグレモノ

         
(有)ケーズホームプランニング
〒376-0031
群馬県桐生市本町4丁目 334
TEL(0277)-32-3363
FAX(0277)-53-32-3365

contact@e-khp.com